①Google検索でのデータ ②人口・治安 ③歴史 の3つの観点から、丸の内がどんな街であるかを探ります。
丸の内といえば、日本有数のオフィス街、ラグジュアリーなホテルや高級料理店がある大人の街というイメージです。
本記事では、そういったイメージがいつできたのか、実際にはどういう人が集まり、何をしているのかが分かります。
普段よく行くという方も、丸の内の思わぬ一面が見られるかもしれません。
「丸の内」はどこにある?
上の地図で、赤い点線内が丸の内です。
東京駅と二重橋前駅の2つの駅がありますが、「丸の内駅」という駅はありません。
東京23区のうち、ちょうど中心あたりの千代田区に位置します。
Google検索データで見る「丸の内」
人気な行動・場所
KH Coderで、「丸の内」と一緒にGoogle検索されているキーワード1,504語(例:「丸の内ビルディング」「丸の内 ランチ」)のうち、出現回数が多い上位100語のつながりを図にしました*。
*:専門用語でいえば、テキストマイニングをして作成した共起ネットワーク。
同じ色の○同士が、一緒に検索されることが多いキーワード群です。
ランチやイルミネーションなど丸の内でしたい行動から、商業施設や飲食店名、そして「丸の内」の名前が付いた路線(「丸ノ内線」)や曲名(「丸の内サディスティック」)まで、さまざまなキーワードが検索されていることが分かります。
普段丸の内によく行く方でも、丸の内での意外な過ごし方が見つかるかもしれません。
「丸の内」と一緒に検索されている1,504語を、出現回数が多い順にランキング形式で10位まで表示しました。
1位の「ランチ」が圧勝で、2位「カフェ」の2.5倍検索されています。
3位の「ビル」は、隣接する大手町でも3位でした。
同じく近隣のオフィス街である八重洲ではランクインしなかったことから、比較的新しく建った高層ビルが多い街で検索回数が増える傾向にあることが分かります。
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9位の丸の内ピカデリー1・2、丸の内ピカデリーDOLBY CINEMAは、丸の内ではなく有楽町にあります。
そこまで大きな映画館ではありませんが、舞台挨拶が行われるのと、同名で複数のビルに入っているため、検索する人が多いようです。
また、上位10語のうち、順番の入れ替わりがあるものの5語が大手町と一致する結果となりました。
丸の内と大手町は似ていることからよく比較されますが、それぞれの街に来る人達の目的も近いことが分かりました。
余談ですが、7位にランクインしている「丸の内サデスティック」は誤謬で、正しくは「丸の内サディスティック」です。
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椎名林檎さんの人気曲で多くの人が検索しているものの、実は曲名を間違えている人のほうが多いという意外な事実が分かりました。
10位「歌詞」も、丸の内サディスティックの歌詞を検索するキーワードでした。
※()内は同じ意図の別キーワード。出現回数は、()内外すべてのキーワードの回数をカウントしています。
「ランチ」と一緒に検索されているキーワードに絞って出現回数上位を見てみます。
1位は「安い(激安/コスパ)」です。
友達など人とのランチに安さを求めるとは考えづらいので、丸の内に会社があって通勤している人のひとり飯ではないかと推測できます。
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2位以下のキーワードを見てみると、いくつかの属性に分かれます。
まず、2位「高級(贅沢/ホテル)」や5位「ヘルシー(低糖質/低カロリー)」からは、女性同士でのランチのお店を探している人が多いと推測できます。
ただ、「高級」の同義で多く出現した「ホテル」やヘルシーなメニューを提供しているお店でランチしている人には、女性同士のグループが多いことから判断しているだけなので、実際にどうかは断定できません。
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続いて、同率2位の「子連れ(ベビーカー/赤ちゃん)」からは、ファミリーもしくは子どものいる友達とのランチが推測できます。
なお、「丸の内」全体の出現回数4位だった「個室」でも、会社員と子連れが多い結果となりました。
そして、4位「土日(土曜日/日曜日)」と5位「おしゃれ」からは、デートや女性同士でのランチが推測できます。
あくまでも検索している人のみのデータではありますが、丸の内は平日は手頃なランチを求める会社員が、土日は女子会やファミリー、デートなどでランチをしにくる人が多い街といえそうです。
「丸の内」全体の出現回数が5位だった「ホテル」にも丸の内特有の傾向が出ていました。
「街+ホテル(例:新宿 ホテル)」では、「安い」の出現回数が1位だったり、ビジネスホテル名やホテル予約サイト名、「素泊まり」「大浴場」といった宿泊を目的としたキーワードの出現回数が多くなります。
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しかし、「丸の内 ホテル」の場合は、宿泊ではなくランチやアフタヌーンティーが利用目的であったり、「高級」「高級ホテル/レストラン名」「五つ星」「ルームサービス」「有名」といった高級志向が窺えるキーワードが頻出していたりします。
こちらも検索データのみでの判断にはなりますが、『丸の内=ラグジュアリーなホテルや高級料理店がある大人の街』というイメージは間違っていなさそうと言えます。
新定番ランキング
Google トレンドをもとに、2004年1月1日〜2023年5月31日までの期間で丸の内に関するGoogle検索で急上昇したキーワードの一覧です。
2003年以前と比べて、検索が急激に増えた行動や場所が分かります。
※急上昇率はすべて同じ。
まず、行動では、ランチやディナーをするお店を検索する人が急激に増えています。
前項の「人気な行動・場所」ではランチが1位でしたが、実はここ20年の間に定着した行動だったことが分かりました。
お店の種類としては、寿司や和食、カフェ、ラーメンが人気でした。
※急上昇率はすべて同じ。
続いて、場所では、丸の内で人気な商業施設や飲食店、ホテルの名前が多く入っています。
KITTEや新丸ビル(新丸の内ビルディング)、グランスタ丸の内、丸の内ブリックスクエアなど、主に2000年代に開業して丸の内のランドマークとなった商業施設名が並んでいます。
また、飲食店やホテルにも、人気で聞いたことがあるような場所が並んでいます。
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特に、ウルフギャング・ステーキハウス 丸の内店とホテルメトロポリタン 丸の内の人気ぶりは凄まじく、ホテルメトロポリタン 丸の内は2ヶ月先まで土曜日チェックインの部屋が埋まっていました(2023年6月14日閲覧)
下3つの住所は、上から順にグラントウキョウノースタワー、新丸ビル、JPタワーの住所です。
検索回数が多かった市区町村ランキング
Google トレンドをもとに、2004年1月1日〜2023年5月31日までの期間で丸の内に関するGoogle検索が多かった市区町村*をランキング形式で10位まで表示します。
*:検索をした時にいた市区町村であり、住んでいるかどうかは関係ありません。
1位は丸の内がある千代田区で突出していて、それ以外では付近の市区町村が多くランクインしています。
次項「人口」で触れますが、千代田区にいる人の大半は千代田区外に住んでいる人達です。
また、丸の内には小中学校や高校はなく、大学もビルの1フロアに入る小規模のサテライトキャンパスが6校あるだけです。
そのため、千代田区で丸の内に関する検索をしている人には、お出かけ・観光や通勤で来ている人が多いと推測できます。
2位以下の検索が多い市区町村を東京都の地図で確認すると、中央区、文京区など千代田区に隣接する区か、千代田区よりも東に位置する区が多いことが分かります。
ただし、千代田区に隣接する区でも、区内に大都市がある新宿区と港区はランクインしていません。
一方で、隣接する新宿区を通り越して、中野区は8位にランクインしています。
中野区は、新宿に関する検索回数が1位ですが、丸の内まで来る人も多いようです。
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また、10位の品川区は、近隣の大手町や八重洲ではランクインせず、丸の内でのみランクインしました。
東京都以外で唯一ランクインした市区町村は、3位の千葉県浦安市でした。
浦安市は、検索回数が大手町では2位、八重洲では3位です。
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東京メトロ東西線で、浦安駅から丸の内に近い大手町駅まで16分と近く、お出かけ・観光で行く人がそれほど多くない八重洲でも上位にランクインしていることを踏まえると、浦安市は東京駅周辺や大手町に職場があって通勤している人が多く住む街なのだろうと推測できます。
人口・治安で見る「丸の内」
人口
丸の内が位置する千代田区の人口をまとめました。
人口
千代田区は、2023年の統計では島嶼部や市部などを除いた東京23区のなかで、人口が1番少ない区です(参照:住民基本台帳による東京都の世帯と人口(町丁別・年齢別)>令和5年1月 – 東京都総務局統計部)
昼間人口
「昼間人口(ちゅうかんじんこう)」は、その市区町村に住んでいる人と通勤/通学してくる人の2つを足し、通勤/通学でその市区町村外に出ていく人を引いた人口を表します。
なお、昼間人口は観光やショッピングなど通勤/通学以外で訪問する人は含みません。
千代田区は、2020年の統計では東京都全体で2番目に昼間人口が多いです(参照:令和2年国勢調査による 東京都の昼間人口(従業地・通学地による人口) – 東京都総務局統計部)
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夜間人口(常住人口)
「夜間人口(やかんじんこう、常住人口(じょうじゅうじんこう)とも言う)」は、その市区町村に住んでいる人の人口です。
昼夜間人口比率
「昼夜間人口比率(ちゅうやかんじんこうひりつ)」とは、夜間人口100人あたりの昼間人口の比率を表します。
昼夜間人口比率は、会社や学校が多い大都市ほど高くなり、その周辺にあるベッドタウンほど低くなります。
都道府県別で見ると、2020年に昼夜間人口比率が高かったのは東京都と大阪府、反対に低かったのは埼玉県と千葉県、神奈川県でした(参照:令和2年国勢調査 従業地・通学地による人口・就業状態等集計結果 結果の概要 − 総務省統計局)
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千代田区は、2020年の統計では昼夜間人口比率が1,753.7で、全国で1番高いです(参照:同上)
つまり、千代田区は昼間人口が夜間人口の17.5倍いることになり、それだけ通勤/通学で来る人が多い市区町村ということになります。
治安
丸の内で発生した犯罪の種類別件数を調べました。
なお、新型コロナウイルス流行以前で、例年どおりの人出があった2019年の統計を使用しています。
粗暴犯数
粗暴犯数とは、暴行や傷害、脅迫、恐喝などの犯罪件数を指します。
丸の内での2019年の凶悪犯数は、1番多い丸の内一丁目で64件でした(参照:警視庁の統計(平成31年・令和元年) > 第83表 軽犯罪法違反の態様別検挙状況(警察署別) − 警視庁)
2019年の東京都全体の平均件数は1件だったのでかなり多く、ワースト6位です(参照:同上)
丸の内一丁目は、上の地図の赤い点線内です。
丸の内一丁目以外では粗暴犯数が平均と同じぐらいで、丸の内一丁目だけ極端に多い結果となりました。
丸の内一丁目に東京駅があることを考えると、あくまでも推測になりますが、全世界から人が集まる(=足が付きづらい)東京駅構内での犯行が多い可能性があります。
東京駅構内では、周辺に怪しい人物がいないかよく確認することをおすすめします。
非侵入窃盗数
非侵入窃盗数とは、自転車盗や万引き、置引き、すりなどの犯罪件数を指します。
丸の内での2019年の凶悪犯数は、1番多い丸の内一丁目で318件でした(参照:同上)
2019年の東京都全体の平均件数は11件だったのでこちらもかなり多く、ワースト8位です(参照:同上)
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内訳としては、万引きが1番多く、次いですり、置引きが多かったため、貴重品の入ったバッグやポケットに注意してください。
凶悪犯数
凶悪犯数とは、殺人や強盗、放火、強制性交などの犯罪件数を指します。
丸の内を管轄する丸の内警察署での2019年の凶悪犯数は、4件でした(参照:警視庁の統計(平成31年・令和元年) > 第33表 刑法犯の罪種別認知・検挙状況(警察署別) − 警視庁)
2019年の東京都全体の警察署別の平均件数は6件だったので、平均より少ないです(参照:同上)
歴史で見る「丸の内」
地名の由来
「丸の内」とは、堀で囲まれた内側という意味です。
江戸時代、江戸城の内堀と外堀の内側(江戸城内)であったことから呼ばれ始め、そのまま地名となりました。
歴史
江戸時代
江戸時代の丸の内は、地名のとおり江戸城内にありました。
丸の内・大手町には、全国各地から参勤交代で来た大名が暮らす大名屋敷が建ち並んでいたそうです。
大名達は、威勢を誇示するためにこぞって豪華な邸宅を建てました。
大きく立派な大名屋敷が建ち並ぶさまは、江戸っ子が「外の津にないは大名小路なり」と自慢するほどでした。
明治〜大正時代
明治時代に入ると、大名屋敷は取り払われ、司法省や東京裁判所、警視庁など司法・警察関係の施設が置かれるようになります。
その後、丸の内は軍用地として使われるようになります。
1888年、兵舎が老朽化で麻布に移転することが決まると、三菱財閥の2代目当主・岩崎弥之助がこのあたり一帯を買い取ります。
そして、日本で初めてのオフィスビルである三菱一号館(現在は三菱一号館美術館として復元)が建てられました。
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大正時代に入って、東京駅の開業など交通インフラが拡充されると、三菱財閥は周囲にレンガ造の建物を次々と建てます。
レンガ造の建物が建ち並ぶさまは、ロンドンの街並みに似ていることから「一丁倫敦(いっちょうロンドン)」と呼ばれるほど見事だったそうです。
こうして、日本初のオフィス街・丸の内が誕生しました。
昭和
丸の内のオフィス街としての開発は、さらに進みます。
大正末期〜昭和初期には、当時としては高層だった7~8階建ての鉄筋コンクリート造のオフィスビルが建ち並ぶようになります。
実用性重視のアメリカ式オフィスビルである丸ビル(丸の内ビルディング)や郵船ビルディング、東京海上日動ビルディング、日本工業倶楽部、明治生命館が建つ街並みは、「一丁紐育(いっちょうニューヨーク)」と讃えられるようになります。
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高度経済成長期に入ると、小ぶりなビルを取り壊してできた大きなブロックに大型ビルを建てるようになり、現在の丸の内の原型ができていきました。
平成〜令和
昭和末期〜平成になると、オフィスビルの老朽化やほかのエリアで高層ビルが増えたことにより、丸の内から流出する企業が増えます。
また、この頃の丸の内はあくまでもオフィス街で、土日に人が来るような街ではありませんでした。
現在のようにランチ、ショッピングをする人達や観光客で賑わう街になったのは、前項「新定番ランキング」で触れたとおり2000年以降です。
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丸ビルの高層化・女性やファミリーをターゲットとした140店舗のテナントの誘致を皮切りに、新丸ビルやKITTEなど近隣のオフィスビルも同様にリニューアル、丸の内仲通りも有名ブランドやカフェ、レストランなどを誘致して歩行者天国として開放した結果、どんどん人が集まり始めます。
丸ビルの建て替え前と比べて、土日の来街者数は約3倍まで増えたそうです。
三菱地所の狙いどおり、平日はオフィス街として、そして女性やファミリーで賑わう街へと変貌を遂げました。
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丸の内の再開発は、現在もまだ続いています。
今後さらにどのような街へと変わるのか楽しみです。
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※参考文献※
丸の内の地名の由来や歴史については、下記HPより学ばせていただきました。
それぞれ詳しく知りたい方は、ぜひ覗いてみてください。
- 町名由来板:丸の内(まるのうち) − 千代田区役所
- 【丸の内】丸の内エリアの魅力をオフィス開発状況や歴史を交えて解説 − 三菱地所リアルエステートサービス
- 【山手線の魅力を探る・東京駅 2】明治の頃は焼け野原だった?丸の内の歴史 − LIFULL HOME’S
- 「丸ビル」の17年 なぜ“オフィス街・丸の内”は変わったのか − ITmedia
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東京の街や散歩が好きで、いろんな街の雰囲気やおすすめのお店が知りたい方には漫画『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』がおすすめです。
ただおすすめスポットを紹介するのではなく、その街の空気感が感じられる景色や描写が多いので、あまり行ったことのない街でも読み終わる頃には散歩したくなっています。
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2021年に、続編の『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』も発売されています。
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