①Google検索でのデータ ②人口・治安 ③歴史 の3つの観点から、八重洲がどんな街であるかを探ります。
八重洲といえば、新しいビルと昔ながらの飲み屋街の新旧が交わるオフィス街というイメージです。
本記事では、そういったイメージがいつできたのか、実際にはどういう人が集まり、何をしているのかが分かります。
普段よく行くという方も、八重洲の思わぬ一面が見られるかもしれません。
「八重洲」はどこにある?
上の地図で、赤い点線内が八重洲です。
東京駅の丸の内口(丸の内中央口・丸の内北口・丸の内南口)の反対側にある、八重洲口(八重洲中央口・八重洲北口・八重洲南口)側に広がります。
東京23区のうち、右側の1番くぼんでいる場所にある中央区に位置します。
Google検索データで見る「八重洲」
人気な行動・場所
KH Coderで、「八重洲」と一緒にGoogle検索されているキーワード977語(例:「八重洲ブックセンター」「八重洲 ランチ」)のうち、出現回数が多い上位100語のつながりを図にしました*。
*:専門用語でいえば、テキストマイニングをして作成した共起ネットワーク。
同じ色の○同士が、一緒に検索されることが多いキーワード群です。
ランチやバスなど八重洲でしたい行動から、施設名や「八重洲」の名前が付いた場所の名前(例:「八重洲口」「八重洲クリニック」)まで、さまざまなキーワードが検索されています。
普段八重洲によく行く方でも、八重洲での意外な過ごし方が見つかるかもしれません。
「八重洲」と一緒に検索されている977語を、出現回数が多い順にランキング形式で10位まで表示しました。
1位「居酒屋」、そして2位「ランチ」が拮抗しています。
1位の「居酒屋」からは、東京駅前に近年建ったばかりの新しい高層ビル群で忘れがちですが、その裏にいまも賑わっている飲み屋街があることが窺える結果となりました。
4位「バス」と7位「八重洲南口」、10位「駐車場」は、八重洲南口に高速バス乗り場が点在しているがゆえのキーワードです。
八重洲南口には、東京駅JR高速バスターミナル バスのりばや丸ノ内鍛冶橋駐車場、バスターミナル東京八重洲など、高速バス乗り場が複数あります。
目当てのバス乗り場に迷わずにたどり着けるように、行き方を検索する人が多いことが窺えます。
また、「バス」では月島がよく検索されています。
東京駅から月島までは、電車だと必ず乗り換えが発生しますが、バスだと電車と同じ時間で乗り換えなしで行けるからのようです。
6位「開発」も、いまの八重洲らしいキーワードです。
次項「歴史」で触れますが、八重洲では大規模な再開発が進行中です。
特に、2020年〜2030年の間は新しい施設の開業予定が立て込んでいるので、工事中の場所だらけで思わず検索したくなるのかもしれません。
そのほかにも、7位「八重洲地下街」や10位「八重洲ブックセンター」など八重洲のランドマークから、10位「八重洲クリニック」や10位「八重洲コンタクト」、10位「八重洲無線」などの病院やお店、会社名まで、八重洲にしかない場所がランクインしています。
「八重洲」と一緒に検索されている977語のなかで、出現回数が1位の「居酒屋」と一緒に検索されているキーワードに絞り、出現回数上位を見てみます。
出現回数が1番多い「個室」が3回、「喫煙」「おしゃれ」「安い」が同率2位で2回です。
「喫煙」「安い」などから推測すると、近隣のオフィスに勤める会社員が同僚との飲み会のために居酒屋を探しているケースが多いのかもしれません。
続いて、出現回数3位「ホテル」の出現回数上位を見てみます。
こちらは、八重洲らしさが見える結果となりました。
ランクインしたキーワードには、ビジネスホテルや出口からの近さを求めるキーワード(「八重洲南口」「八重洲口」)、ホテル予約サイト名や「口コミ」「おすすめ」など、宿泊目的のキーワードが大半を占めました。
しかし、「高級」「五つ星」「ブルガリホテル」など、一部高級ホテル志向が窺えるキーワードも混ざっているのは、八重洲が丸の内エリアからほど近いからでしょう。
最後に、出現回数7位「カフェ」の出現回数上位を見てみます。
「カフェ」と一緒に検索されているキーワード10語のうち、7語が機能性(例:「ネットカフェ」「早朝」「電源カフェ」)・利便性(「八重洲南口」「八重洲口」)を求めるキーワードとなりました。
なかでもネットカフェの検索が多いのは、高速バス乗り場が多い八重洲らしいです。
あくまでも検索データをもとにした推測にはありますが、八重洲には仕事終わりに手頃な居酒屋で飲む会社員と、高速バスやビジネスホテルを目的に来る観光客が多いと言えそうです。
新定番ランキング
Google トレンドをもとに、2004年1月1日〜2023年5月31日までの期間で八重洲に関するGoogle検索で急上昇したキーワードの一覧です。
2003年以前と比べて、検索が急激に増えた行動や場所が分かります。
※急上昇率はすべて同じ。
まず、行動では、八重洲でランチやディナーをするお店を検索する人が急激に増えています。
前項の「人気な行動・場所」でランチは2位でしたが、ここ20年の間に定着した行動であることが分かります。
※急上昇率はすべて同じ。
続いて、場所では、八重洲に新しくできた商業施設やホテル、会議室、飲食店の名前などが並んでいます。
東京ミッドタウン八重洲やスーパーホテルPremier東京駅八重洲中央口、ベルサール八重洲、TKP東京駅セントラルカンファレンスセンターなど、ここ20年の間にできた商業施設、ホテル、会議室が並んでいます。
一方で、パールホテル 八重洲や泰興楼TOKYO、丸ノ内鍛冶橋駐車場など、再開発に伴い閉店や移転する場所も検索されていました。
泰興楼TOKYOは、1949年創業の歴史ある中華料理店です。
八重洲内で移転し、TaiKouRou TOKYOとしてリニューアルオープンしています。
丸ノ内鍛冶橋駐車場は、今後バスターミナル東京八重洲に集約される予定です。
検索回数が多かった市区町村ランキング
Google トレンドをもとに、2004年1月1日〜2023年5月31日までの期間で八重洲に関するGoogle検索が多かった市区町村*をランキング形式で10位まで表示します。
*:検索をした時にいた市区町村であり、住んでいるかどうかは関係ありません。
1位の八重洲がある中央区、そして中央区に隣接する2位の千代田区が圧倒的に多い結果となりました。
次項「人口」で触れますが、中央区と千代田区にいる人の大半は、それぞれの区外に住んでいる人達です。
また、八重洲には区立の小学校が1校あるだけで、中学や高校はなく、大学もビルの1フロアに入る小規模のサテライトキャンパスが1校あるだけです。
そのため、中央区と千代田区で八重洲に関する検索をしている人には、通勤や観光・お出かけで来ている人が多いと推測できます。
3位以下の検索が多い市区町村を東京都の地図で確認すると、江東区や台東区、墨田区など中央区に隣接する区や、文京区や荒川区など近くの区が多いことが分かります。
ただし、中央区に隣接する区でも、区内に大都市がある港区はランクインしていません。
一方で、隣接する新宿区を通り越して、中野区は6位にランクインしています。
中野区は、新宿に関する検索回数が1位ですが、八重洲まで来る人も多いようです。
東京都以外でランクインした市区町村は、3位の千葉県浦安市、7位の千葉県君津市の2つでした。
浦安市は、検索回数が近隣の丸の内では3位、大手町では2位です。
東京メトロ東西線で、浦安駅から八重洲に近い日本橋駅まで16分と近く、お出かけ・観光で行く人がそれほど多くない八重洲でも上位にランクインしていることを踏まえると、浦安市は東京駅周辺や大手町に職場があって通勤している人が多く住む街なのだろうと推測できます。
しかし、君津市は、市内のどの駅からも八重洲付近の駅まで遠いので、意外なランクインとなりました。
人口・治安で見る「八重洲」
人口
八重洲が位置する中央区の人口をまとめました。
人口
中央区は、2023年の統計では島嶼部や市部などを除いた東京23区のなかで、人口が2番目に少ない区です(参照:住民基本台帳による東京都の世帯と人口(町丁別・年齢別)>令和5年1月 – 東京都総務局統計部)
昼間人口
「昼間人口(ちゅうかんじんこう)」は、その市区町村に住んでいる人と通勤/通学してくる人の2つを足し、通勤/通学でその市区町村外に出ていく人を引いた人口を表します。
なお、昼間人口は観光やショッピングなど通勤/通学以外で訪問する人は含みません。
中央区は、2020年の統計では東京都全体で5番目に昼間人口が多いです(参照:令和2年国勢調査による 東京都の昼間人口(従業地・通学地による人口) – 東京都総務局統計部)
夜間人口(常住人口)
「夜間人口(やかんじんこう、常住人口(じょうじゅうじんこう)とも言う)」は、その市区町村に住んでいる人の人口です。
昼夜間人口比率
「昼夜間人口比率(ちゅうやかんじんこうひりつ)」とは、夜間人口100人あたりの昼間人口の比率を表します。
昼夜間人口比率は、会社や学校が多い大都市ほど高くなり、その周辺にあるベッドタウンほど低くなります。
都道府県別で見ると、2020年に昼夜間人口比率が高かったのは東京都と大阪府、反対に低かったのは埼玉県と千葉県、神奈川県でした(参照:令和2年国勢調査 従業地・通学地による人口・就業状態等集計結果 結果の概要 − 総務省統計局)
中央区は、2020年の統計では昼夜間人口比率が456.1で、東京都で2番目に高いです(参照:同上)
つまり、中央区は昼間人口が夜間人口の4.6倍いることになり、それだけ通勤/通学で来る人が多い市区町村ということになります。
治安
八重洲で発生した犯罪の種類別件数を調べました。
なお、新型コロナウイルス流行以前で、例年どおりの人出があった2019年の統計を使用しています。
粗暴犯数
粗暴犯数とは、暴行や傷害、脅迫、恐喝などの犯罪件数を指します。
八重洲での2019年の凶悪犯数は、八重洲一丁目/二丁目ともに3件でした(参照:警視庁の統計(平成31年・令和元年) > 第83表 軽犯罪法違反の態様別検挙状況(警察署別) − 警視庁)
2019年の東京都全体の平均件数は1件でしたが、飛び抜けて高いというわけではありません(参照:同上)
余談ですが、ワースト1位の新宿区歌舞伎町一丁目では112件でした。
非侵入窃盗数
非侵入窃盗数とは、自転車盗や万引き、置引き、すりなどの犯罪件数を指します。
八重洲での2019年の凶悪犯数は、八重洲一丁目で24件、二丁目で29件でした(参照:同上)
2019年の東京都全体の平均件数は11件だったので、こちらも平均よりは高い結果となりました(参照:同上)
しかし、八重洲からすぐの東京駅構内を含む丸の内一丁目は318件で、東京都全体でワースト8位だったので、東京駅では貴重品の入ったバッグやポケットに注意したほうがよいかもしれません。
凶悪犯数
凶悪犯数とは、殺人や強盗、放火、強制性交などの犯罪件数を指します。
八重洲を管轄する中央警察署での2019年の凶悪犯数は、2件でした(参照:警視庁の統計(平成31年・令和元年) > 第33表 刑法犯の罪種別認知・検挙状況(警察署別) − 警視庁)
2019年の東京都全体の警察署別の平均件数は6件だったので、平均よりかなり少ないです(参照:同上)
歴史で見る「八重洲」
地名の由来
「八重洲」とは、「八代洲(やよす)」が転じたものという説が有力です。
江戸時代初期、日本に漂着したオランダ人通訳者ヤン・ヨーステン(和名は耶楊子(やようす))が、このあたりに邸宅を構えたことから呼ばれるようになったと言われています。
八重洲通りとヤエチカ(八重洲地下街)に、ヤン・ヨーステンの顔の像が設置されています(上の写真は八重洲通り)
歴史
江戸時代
江戸時代の八重洲は、大工や桶職人、鍛冶屋などさまざまな職人の店が建ち並ぶ職人町でした。
明治時代
明治時代に入ると、銀行業や金融業、保険業、運送業などの近代産業が生まれ、発展します。
大正時代〜昭和
1914年に東京駅が開業し、1929年に八重洲口が開設されると、次第に八重洲に本社機能を移す企業が増えていきます。
こうして、オフィス街・八重洲が誕生しました。
平成〜令和
八重洲では、現在も大規模な再開発が続いています。
2023年3月に東京ミッドタウン八重洲が開業しましたが、その後も複数の高層ビルの建設やバスターミナル東京八重洲の全体開業(2022年9月に第1期エリアのみ開業)、大規模な公共駐輪場の整備を予定しており、数年単位で街並みが大きく変化していきそうです。
再開発によって、昔からあるランドマーク的存在のお店やホテルがなくなるのは寂しいですが、ヤエチカや飲み屋街など古きよき場所もまだまだ残っており、そこで楽しむ人達もたくさんいることが分かりました。
再開発が進んでも、新旧両方のランドマークが共存する街として残っていってほしいものです。
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※参考文献※
八重洲の地名の由来や歴史については、下記HPより学ばせていただきました。
それぞれ詳しく知りたい方は、ぜひ覗いてみてください。
- ヤン・ヨーステンについて | ヤエチカ(八重洲地下街)| 東京駅 − ヤエチカ(八重洲地下街)
- 八重洲の歴史 | 東京ミッドタウン八重洲について | 東京ミッドタウン八重洲 − 東京ミッドタウンマネジメント株式会社
- 東京駅前・八重洲エリアの再開発計画・新築オフィスビル特集 − 東京ベストオフィス TOKYO BEST OFFICE
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